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#4 『ホールという空間を“夢”で包み込みたい』~理念に込めた想い~

こんにちは!

総監督の米本です。

今回は理念の話をしたいと思います。

 

理念というのは、その団体の存在意義や向かうべき方向を示した言葉で、理念によって団体のカラーが明確になります。

企業や団体なら理念を持っていて、それをもとに経営、運営するのが健全な形である(と経営組織論で習いました)。

 

けれども、オーケストラとなると理念を掲げて活動している楽団は少ないようです。

そのためか、理念を掲げているトラオム祝祭管弦楽団は異色に映り、時には「トラオムは宗教だ」などと揶揄されてしまいます。

しかし、私としては団体なら理念の下に運営するのが当たり前で、むしろ健全であるという感覚なので、特に変わったことをしているつもりはないのです……。

 

他の楽団がどうかはあまり分からないのですが、トラオムには理念は欠かせないものです。

なぜなら、月刊トラオム#1や#3にもある通り、トラオムに所属する人、特に運営に携わる人たちは変人だからです。変人たちを束ねるには理念が必須です。

変人というのは悪い言い方をすれば、世間で厄介者とされることもある人たちです。

しかし、私は世間が厄介者と認定する人ほど、エネルギーが有って、面白くて、力になる人はいないと思うのです。

変人というのはどこか突出した方向にエネルギーを持っています。

その突出した方向性を束ねる何かがあれば、ものすごいエネルギーとなります。その何かこそが理念なのです。

 

 

では、トラオム祝祭管弦楽団の理念はというと、

『ホールという空間を“夢”で包み込みたい』

というものです。

これは、演奏する側の自己満足でも、お客さんへの迎合でもなく、ホールにいるみんなで夢のような異世界観に浸り、その場にいる全ての人で満足を共有したいという意味です。

これは、せっかくトラオムに参加して演奏するなら「参加してよかった!」と満足してほしいし、せっかくトラオムの演奏会に来てくれるなら「感動した!」と満足して帰ってほしいという私の想いでもあります。

 

 

トラオム祝祭管弦楽団の運営や企画は全てこの理念に沿って進められています。

 

例えば、今回のプログラムが『ヘンゼルとグレーテル』に決まるまでの過程で、難易度や曲の長さがちょうど良いとして『ジャンニ・スキッキ』というオペラも候補に上がりました。

しかし、遺産相続をめぐるコメディオペラという、あまりにも現実味のありすぎる内容あり、これではホールを“夢”で包むことはできないという判断で却下されました。

 

また、トラオム祝祭管弦楽団の運営部には理念を実現するために大事にしている3つの価値観があります。

 

    ①現状に満足せず、常に改善思考を持ち続ける楽団

    ②批判だけでなく、建設的提案ができる楽団

    ③できない理由を並べるより先に、できるようにする方法を考えられる楽団

 

ホールという空間を“夢”で包み込むのは簡単なことではありません。

だからこそ、これらの価値観を示し、それに共感した熱量の高い人たちで「挑戦し続ける楽団」の運営をしています。

 

そして、トラオムは団員が理念のもとに対等な楽団を目指しています。ヒエラルキーはできるだけ排除し、誰が言ったかよりも何を言ったかの方が重視され、理念と照らし合わせて最も妥当な意見が通るような楽団でありたいと思っています。

 

 

トラオム祝祭管弦楽団は、もともと「夏の夜の夢」をやるための単発のオーケストラとして始まった楽団です。

しかし、第2回、第3回と続けていく決断をした段階で、僕らが音楽をする上で大事にしていたことを理念という形で言語化しました。

トラオム祝祭管弦楽団は今後も「ホールという空間を“夢”で包み込みたい」という理念を掲げて活動し、皆さんに素敵な音楽を届けていきます!